名は体を表すといいますが、エスプレッソは、淹れたてをすぐに飲むことが大切です。まさに「エクスプレス=特急」で。
コーヒー通にいわせれば、芳醇で、香り高く、しかもベルベットのように滑らかなエスプレッソは、コーヒーの淹れ方の神髄です。表面に自然にできた泡(クレマ)の層の下には、深いコクがあり、しかも絶妙なバランスのとれた液体があります。理想の淹れ方が実現したとき、そこには化学と物理学の小さな奇跡が起き、科学と芸術が手をたずさえ、宙を舞います。
エスプレッソの本格的な手順は明確かつベーシックですが、正しく実行するにはトレーニングと経験、生まれついての才能が必要です。9気圧以上の圧力のかかった88〜93℃の熱湯の噴流が、7グラムのコーヒー粉を押し固めたケーキの層を通過します。うまく手順通りにいくと、感覚の至純の喜びをもたらす、30ml以下の濃縮物ができあがります。
本格的なエスプレッソの淹れ方は、理想的には、このきわめて純粋な製法のために完成された、新鮮さを保った豆挽き工程から始まります。バリスタの技術は、粉の量を計測し、熟練した技でフィルターの中に適量のコーヒーを押し固め、それから時間と温度と圧力を注意深く見守ることにあります。今日の最新鋭の全自動機械でも、正しく監視を行うことが必要です。完璧なエスプレッソができるかどうかはバランス次第だからです。